今回は、小児科医、医学博士であり長年脳科学の研究をされている成田奈緒子さんと、臨床心理士の上岡勇二さんの共著である、「睡眠」に関する本を紹介します。
ちなみに成田先生については、別の記事で山中伸弥教授との対談本を紹介しました。
早寝早起きがよいと昔から言いますが、実際のところ何時に寝せるのが良いのかわかりません。
はい、そのあたりも含めて必要な睡眠とはどのようなものなのかを教えてくれる本になっているので、気になったらぜひ以下を読んでみてくださいね。
- タイトル
子どもが幸せになる「正しい睡眠」 - 著者
成田奈緒子 上岡勇二 - 発売日
2019/4/15 - 出版社による紹介文
子どもにとって睡眠は、脳と体を育てる大切な時間。毎朝きちんと起きられる生活リズムの作り方、眠りの質を高められる食事や環境など…小児科医と臨床心理士が教える脳科学的に「正しい睡眠」による、心と体にいい子育て。
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そもそも睡眠がこどもに与える影響ってどの程度あるの?
睡眠不足は良くないというのは、子どもに限った話ではなく、私たち大人も同じなのですぐに理解しやすいことですね。
では、「いったい自分の子どもが何時間の睡眠を必要としているのか」、「何時に寝せるべきなのか」については実はよくわかっていない、という方が多いのではないでしょうか。
わが家でも、子どもは21時までには寝せよう、というくらいのルールは作っているものの、時々ちょっと遅くなってしまうときがあります。
正直に言うと、「そもそも何時間の睡眠が必要か」という点についてはあまり理解できていませんでした。
みなさんはどうでしょうか?
この本はもちろん、そのような「睡眠に関する基本的な疑問」に対してきちんと答えてくれるのですが、それよりも注目すべきが、「正しい睡眠ができていないことによって起きるさまざまな問題」についての部分です。
その問題とは、たとえば以下のようなものです。
- 食が細い、好き嫌いが多いなどの、食事に関する問題
- ケガや病気が多いなどの、体調に関する問題
- 勉強が遅れがちなどの、勉強に関する問題
このような問題は、もしかするとすべて「正しい睡眠ができていないことによるもの」なのかもしれない、とこの本は説明されています。
「え?あの行動と睡眠が関係しているの?」
と思うものも紹介されていますが、なぜ関係があるのかは、睡眠と脳の関係を説明しながら教えてくれます。
なぜ「正しい睡眠」を理解する必要があるの?
そもそも「正しい睡眠」とは?
「睡眠時間さえきちんと確保すれば睡眠不足は解消されるから、問題ないのでは?」
こんな風に考えてしまいがちですが、著者が考える「正しい睡眠」とは、
- 年齢にあわせた十分な睡眠時間を取る
- 太陽が沈んでいる間は眠る
ということであり、これら2つが習慣化できているということだそうです。
年齢に合わせた十分な睡眠時間とは、たとえば6歳なら10時間45分(20:00に寝たなら6:45に起きる)、12歳なら9時間15分(21:00に寝たなら6:15に起きる)と説明されています。
実際には必要な睡眠時間を確保できていない子どもが多いようです。
なぜ「正しい睡眠」が必要なの?
「正しい睡眠」というけど、そもそもなぜ必要なの?
その答えは、「脳が育つために必要だから」です。
この本によると、脳には以下の3種類があるそうです。
- 人間の生活リズムや、感情などに関係する「からだの脳」
- 知識に関係する「おりこうさんの脳」
- 思考や判断に関係する「こころの脳」
これらの脳は、年齢に応じて育ちやすさが異なるためなるべく子どもが小さいころから正しい睡眠を行うことによって確実に脳が育つということです。
たとえば「おりこうさんの脳」は、1~18歳で育つ脳であり、正しい睡眠をとることにより学習した内容や知識がきちんと整理されて定着することを助けてくれるということです。
これが、「勉強が遅れている」という子どもの状況が、正しい睡眠により解決するかもしれないとされている根拠に繋がっています。
このように、「子どもの行動におこる問題はすべて睡眠が問題かもしれない」というのは、上記のいずれかの脳の発達と関係している可能性が高いから、ということがこの本を読むと理解できるようになっています。
どう子どもの睡眠を改善していけばいいの?
この本は、上記のように「睡眠と脳の関係」について詳しく説明されたあとに、「ではどのように改善していけばよいか」について、たくさんの事例を用いてアドバイスを与えてくれます。
まず大切なのは、睡眠を改善しようとしたときに、「起きる時間をそろえる」ことからはじめるのが良いという点でした。
それ以外にも、「『おふろ→夕食』の順番にしてみる」、「長期の休みをうまく活用して生活リズムを変える」など、「ケース別睡眠の整え方」と「睡眠Q&A」という2つの章にわたってたくさんのアドバイスが書かれています。
個人的には、「眠るときには体温が下がるのに、子どもの手足がポカポカになるのはなぜ?」や「毎朝何時に起きるのがよいの?」という質問のページがおもしろかったです。
睡眠についての思い込みや、なんとなくやっていることの良い点や悪い点などを整理することのできる本なので、多くの人に読んでもらいたいと思います。
まとめ
いかがでしたか?
「勉強の遅れを取り戻すために塾に行かせるのではなく、睡眠を整えることで知識を脳に定着させる」など、「考える順番を入れかえてみる」ためのアドバイスが多く得られて、個人的には目からうろこな内容がたくさんありました。
「なんだか子どもの調子が悪いな」と思うことがある方は、ぜひ目を通してみてください。
- タイトル
子どもが幸せになる「正しい睡眠」 - 著者
成田奈緒子 上岡勇二 - 発売日
2019/4/15 - 出版社による紹介文
子どもにとって睡眠は、脳と体を育てる大切な時間。毎朝きちんと起きられる生活リズムの作り方、眠りの質を高められる食事や環境など…小児科医と臨床心理士が教える脳科学的に「正しい睡眠」による、心と体にいい子育て。
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