今回は、「子どもが指示待ちっ子ではなく、自分から動く子になるために親が意識すべきこと」について、脳科学の観点から教えてくれる一冊を紹介します。


- タイトル
子どもは「親の心配」をランドセルに入れて登校しています - 著者
桑原朱美 - 出版社による紹介文
親の「負の習慣」が、「指示待ちっ子」をつくっていた!
というのも、保健室で子どもたちの心の問題に携る中で、「親自身の生きづらさ」にかかわることでアドバイスをしていると、相乗効果が表れていくということが多々あったからだ。
そして、脳科学を学ぶことで、「無意識にあるものが意識していることの2万倍で、相手に影響を及ぼしている」ことが理論として説明できるようになったのである。
「問題行動」を起こす子どもの親自身の習慣(前の世代から受け継いだ無意識の習慣)を具体的に取り上げ、主体性のある子どもに変える方法をお伝えする。
また、ウィズコロナの中で、子どもたちの心身の健康をどう守るかという緊急の課題についても、新しい生活様式という視点からも、親の無意識の習慣のあり方を説いていく
「親の心配」をランドセルに入れるってどういうこと?
この本を見つけた時に、何よりそのタイトルがすごいなと思いました。
「『親の心配』をランドセルに入れて登校する」
いったいどういう意味なのでしょうか。
この本の冒頭では、著者の桑原さんがこれまで多くの保護者から受けた相談の内容を紹介しつつ、「親の無意識の習慣」が子どもの人格形成に影響を与えている、ということについて説明されています。
続いて、子どもを「指示待ちっ子」にしてしまう親の「負の習慣」がどのようにつくり出されてしまうかについても例を挙げながら紹介されています。
たとえば、「自分に対する自身のなさを何かで補おうとする」親の傾向として、「優秀な子ども=自分の価値と考える」というような行動に表れる、と。
子どもが褒められると、あたかも自分が褒められているような気分になってしまうというのは、自分にも少なからずありそうだな、と思ってハッとしました。
このような親の傾向が、親自身の日常の行動、子どもへの言葉がけ、子どもに対する愛情のかけ方に大きく影響しているのだと思うと、「無意識」の恐さを感じます。
そういう意味で、この本は私たち保護者が、意識せずにやっている習慣や行動を客観的に見つめ直すための良いきっかけとなってくれます。
指示待ちっ子の問題って何?
「指示待ちっ子」の反対は「自分から動く子」。
モンテッソーリ教育でも、こどもの主体性を重要視していますし、このサイトで紹介している本の中にも主体性の大切さが書かれている本はたくさんあり、子育てにおいて、「主体性」は非常に重要なポイントだと思います。
では具体的に、「指示待ちっ子」と「自分から動く子」には、どのような行動の違いがあるのでしょうか?
この本では両者の行動として、様々な違いを上げられていますが、その一部は以下のようなものです。
指示待ちっ子 | 自分から動く子 |
---|---|
困ったことがあると「どうしたらいい?」と丸投げ | 「自分はこう考えるけどどう思いますか?」と自分の意見を交えてアドバイスを求める |
答えのないものについて考えることに抵抗を示す | 試行錯誤を楽しむ |
「あなたはどうしたいか」を聞かれると、親の顔を見て、自分の意見が親の意見と合っているかを確認する | 自分はこうしたい、を言葉にできる |
こうして見ると、どんな保護者でも「自分から動く子の方が良いに決まっている」、と思うのではないでしょうか。
もしそうであれば、子どもが「自分から動く子」になることを無意識に邪魔していないか、また、どんな行動がその邪魔をしてしまうのかについて、客観的に知っておく必要がありそうです。
自分から動く子になるために親ができること
それでは、「指示待ちっ子」ではなく「自分から動く子」にするために親が意識しておくべきことはなんでしょうか。
この本の中で私が一番好きな部分が、「親が『自分の幸せを許可できる』こと」について書かれた部分です。
そこに書かれているのは、「まず親自身が『自分で決めて自分で動き、自分の人生に責任を持って生きる』ことが大切」と書かれています。
自分が満たされていないのに、子どもだけ幸せになるなんてできない、と著者の桑原さんは言われています。
以前別の記事で、「子どもの未来が輝く「EQ力」」という本を紹介しましたが、そこに「率先垂範のススメ」ということが書かれていました。
子どもにこうあってほしい、と思うのであればまず親自身がそういう姿を見せなければならない、ということが書かれていて、ハッとさせられて以来、頻繁に思い出している言葉です。
桑原さんがこの本で書かれている、「自分がまず幸せにならなければならない」という言葉も、この率先垂範の考えと通じるものがあるのではないかと思います。
この本の大部分は、「指示待ちっ子が育つ環境」と、その対比として「自分からやる子が育つ環境」が「言葉がけ」「愛情」などのグループに分かれてたくさん紹介されています。
いくつか紹介すると、
- 親が代弁する⇔子どもが自分から話すのを待つ
- 子どもの話に同一化する⇔ニュートラルに話を聴く
- 子どもが困っていると自分の価値を感じる⇔子どもと自分の価値を混同しない
などです。
なぜそのようにした方が良いのかについても詳しく説明してあり、これまで他の本で説明されている内容が、桑原さんの説明により、より深く理解できたものもありました。
そんな中でも私のお気に入りは、「カラナイ言葉」と「カラコソ言葉」について書かれたページです。
「〇〇から、〇〇できない」という表現ではなく、「〇〇からこそ、〇〇しよう」という表現を多用する方が、物事をポジティブに捉える習慣がつくという話なのですが、困難を乗り越える力(レジリエンスという言葉で近年表現される、これからの時代必要とされている力)を養えるかどうかは、このような言葉がけの違いが大きく影響するのかもしれないと思いました。
おわりに
まずは親自身が幸せになろうね、と優しく教えてくれる本は、案外なかったように思います。
わたし自身も、少なからず(気づいていないだけで結構多いのかもしれません)親の影響を受けていて、自分なりに子育てに関する思いは色々と持っていますが、「親のような子育てをしたくない」と過剰に意識するよりも、まずは自分が子育てを通じて自分の人生をどのようにしたいかということをゼロベースで考えてみることがとても大切なのだと、この本を読んで理解することができました。
子育てに対して強い思いを持っている方にこそ、ぜひ読んで欲しい一冊です。

- タイトル
子どもは「親の心配」をランドセルに入れて登校しています - 著者
桑原朱美 - 出版社による紹介文
親の「負の習慣」が、「指示待ちっ子」をつくっていた!
というのも、保健室で子どもたちの心の問題に携る中で、「親自身の生きづらさ」にかかわることでアドバイスをしていると、相乗効果が表れていくということが多々あったからだ。
そして、脳科学を学ぶことで、「無意識にあるものが意識していることの2万倍で、相手に影響を及ぼしている」ことが理論として説明できるようになったのである。
「問題行動」を起こす子どもの親自身の習慣(前の世代から受け継いだ無意識の習慣)を具体的に取り上げ、主体性のある子どもに変える方法をお伝えする。
また、ウィズコロナの中で、子どもたちの心身の健康をどう守るかという緊急の課題についても、新しい生活様式という視点からも、親の無意識の習慣のあり方を説いていく
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